『元気がなくなっている左後脚の複雑骨折の子猫がいるんです。引き出して集中的なお世話をしてもらえないでしょうか?』
行政から引き出しの依頼がありました。
レントゲン写真では左大腿骨が股関節側と膝関節側2か所で完全に折れて大きくずれており、脚の付根はパンパンに腫れていました。お腹の中には寄生虫も2種類いました。
『骨折部位に関しては、そのまま様子を見るのか、骨折の手術をするのか、最悪断脚になるのか・・・。最終的には担当された獣医の先生の判断によると思います』と。
元気な子猫しか見たことのない我が家で、
果たしてちゃんとお世話ができるのか…。
不安いっぱいの家族会議です。
「引き出さないときっと死んでしまう。できるできないではなく、今できることを最大限やってみよう。」と預かることに決めました。
最初に決めたのは「トム」という名前。
引き出して会う前に決めました。
何があっても死なず、必ず復活する、トム&ジェリーの不死身のトムにあやかりました。
願かけです。
行政からの引き出し予約は午後から。
午前中は4~5人のボランティアさんに相談しながら骨折した子猫を診てくれる病院探しに費やしました。
しかし、最初から断られたり、予約診療のみ対応していたり、診てみないと治療できるかは分からないと言われたり。
結局、受診先が決まらないままトムを引き出すことになりました。この時はまだ不思議と何とかなると思っていました。
しかし、実際に初めて見たトムはガリガリでなんと小さいことか!
他の兄弟たちが800gにあるのに対しトムは475gしかありませんでした。
幸いなことに目には力があり、ゴソゴソ動いて噛みつこうとする元気はありましたが、左脚の付け根はパンパンに腫れあがっていました。
担当の方から申し送りを受けましたが、保存的にできる治療は全てやってきている印象を持ちました。
それなのにエサが食べられなくなってきており、これは大変危険な状態で、緊急で対処を要すると思いました。
車に戻るとすぐに、「何ができるかわからないが、連れてきたら診ますよ」と言ってくれた病院に予約を取りました。不安でドキドキ心臓が脈打つのを感じ、手が震えていました。
病院で改めてレントゲンを撮った診断では、
『左後脚の複雑骨折。排泄はできており、脊椎や骨盤の骨折やゆがみはなさそう。
お腹に寄生虫が2種類おり、栄養状態が悪く小さすぎる。
骨折部位はいずれ治療していかなくてはならないが、今の身体のサイズや体重だと長時間の麻酔に適した器具がなく、体力的にも厳しい。
リスクを負って手術をするより、寄生虫の治療をして体重を増やしてから、その時に適した手術をしたほうが良い。
繋ぐ手術は骨折部位が悪く非常に難しい。
もし、手術をするなら、費用はざっくり30万円前後かかるでしょう。』
大掛かりな手術のことや高額の費用のこと、考えなくてはいけないことは山ほどありました。
それでも、「まずはしっかり食べさせて体重を増やすこと!今はこれしかできることがない!」逆に分かりやすくてホッとしたのを覚えています。
(都津川)
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